Good old fashioned lover boy
第8章 愛にすべてを
「君の瞳はどんなものでも映す。
それが例え、相手にとって都合の悪い真実だとしても…。
君は僕の思うように動いてくれる。
こんな幸運の女神は誰が渡すものか。
君の瞳は僕のものだ…。」
そのメッセージは歪み、狂った愛に満ちたもので読んだだけでも吐き気を催してしまいそうなものであった。
誰にだって恋慕う人に自らの思いを伝える文章を書いたことがあるだろう。
しかし「それとこれ」では話が違う。
己の為なら誰かが犠牲になっても構わない。
しかし、それが「彼女」ならば自身の思うように利用する。
そんな独占欲がこの文章に表れてるようにもリゾットには思えた。
以前、会議を終えて参加していなかった仲間に報告をした際にプロシュートが「コイツはイタリアーノの風上にも置けないクソ野郎だ。」とタバコをふかしながら言っていたのをリゾットは思い出した。
考えてみれば彼の言った通りだ。
「彼女」への思いが書かれた文章は数ページにも及び、最後の方にはあの特徴的なスミレ色の瞳の部分だけを切り取った写真がびっしりと貼られていた。
こればかりはさすがのリゾットも鳥肌が立ってしまった。
以前にメローネが「彼は眼球性愛者じゃないのか?」と話していたのを彼は思い出した。
もしかしたらそうなのかもしれない…。
重要な証拠になり得そうな記録は全てカメラで撮影した。
リゾットはこの狂愛に満ちた地下室から立ち去った。
長い階段を上がり来た道を戻ろうとした時、その先にいたのは西洋人形のような格好をした女がそこに立っていた…。
否、人型の「何か」がそこにいた。