Good old fashioned lover boy
第5章 誘惑の炎
※ヒロインside
窓から外を見ると多くの人間が屋敷を行ったり来たりしていた。
恐らく明日行われるパーティーの準備をしているのだろう。
お金持ちの金銭感覚はよく分からない。
湯水のごとくパーティーや買い物につぎ込んでは道楽に明け暮れる。
そしてその道楽と呼ばれるものは時に法律や倫理の壁を越えた恐ろしいものだったりする。
私の口からでは話すのも怖いくらいに…。
すると部屋のドアを誰かがノックする音が聞こえた。
ドアを開けると奴の側近の一人である黒服の男がプレゼントと思しき箱を持って立っていた。
「レオナルド様からあなたへとのことです。」
男はそう言って箱を私に差し出した。
やっぱりそうだ…。
私はそれを無言で受け取り部屋のドアを閉めた。
箱の中身はシンプルな紫色のパーティードレスだった。
だが私はこれまで奴から受け取ったパーティードレスは一度も着たことがない。
パーティーにはいつも着てる黒いスーツにスカーフを身につけただけの格好である。
それが私にとっては最良の格好であるからだ。
他の女性のようにきらびやかな格好はあまりしたくない。
そうしたところで瞳の色が浮いてしまい後ろ指をさされるのが関の山だと私は考えている。
しかし奴は自身がプレゼントしたものを身につけていなくても機嫌を損ねた様子がないのが不幸中の幸いだった。
心の中でどう思っているのかは知らないが…。
私はクローゼットからいつものスーツを取り出した。
せめてホコリは落としておこう…。
窓から注がれる午後の日差しが机に飾ったままのエメラルドの指輪を明るく照らした。