Good old fashioned lover boy
第4章 ジュエル
なんと鉛筆が一輪の花に変わっていた。
あまりの出来事に私は驚きを隠せなかった。
もしかしたら…。
そう思った私はもう一度同じ動作をしようとした瞬間、何者かに見られてるような視線を感じ鏡を見ると、振り向くとそこには西洋人形が着てるドレスのようなものを着た女性が立っていたのだ。
背丈は母親と同じくらいで肌は陶器のように白くて瞳の色が奇しくも私と同じスミレ色だった。
ただ、瞳の色は同じだがどちらかと言えば人間の目と言うよりかは猫の目に近いと言ったほうが良いのかもしれない…。
普通であれば鏡に得体の知れない“何か”が写っていたら驚きと恐怖のあまり声をあげるはずだが、何故か私はわずかに残っていた好奇心を振り絞って彼女の白い手に触れた。
すると私の手に伝わってきたのは同じくらいの温もりだった。
自分自身と連動しているってこと…?
私は左手を上げると彼女も同じように上げたのを見計らってパチンと指を鳴らした。
すると彼女は煙のようにスーッと消えてしまった。
驚いた私は彼女を呼ぼうとまた指をパチンと鳴らした。
鳴らした瞬間に彼女は何事もなかったかのように再び私の前ヘ現れた。
表情は人形と同じくずっと真顔でただ私を猫とも捉えられるような目でじっと見つめていたのだった。
もしかして、鉛筆からこの花に変えたのも彼女…?
私は意を決して彼女に問いかけた。
「これ、あなたが変えたの?」
彼女がゆっくりと頷いたその時、誰かが部屋に近づいてくる足音が聞こえた。
私は慌てて指を鳴らして彼女を消した。
部屋のドアを開けたのは母だった。
「ヴィオーラ、ご飯が出来たわよ。
冷めないうちに食べましょう。」
「分かったわマードレ。」
短いやりとりをして部屋を出て行こうとした瞬間、机に開いたまま置いていた勉強用のノートが何故だか気になりそれを見た。
そこには大ぶりかつ繊細な字でこう書かれていた。
「私はあなた自身なのよ」と…。