Good old fashioned lover boy
第11章 懐かしのラヴァーボーイ

ソファーに腰かけたそのすぐ後に温かい紅茶とお茶請けのクッキーを「彼」が持ってきてくれた。
「こんな遅い時間に来たというのに色々とごめんなさい。」
「貴女が謝ることはありませんよ。僕がそうしたのですから。」
そう言って「彼」は私の隣ヘゆっくりと腰かけた。
てんとう虫のブローチが黒いスーツを身にまとい、開いてる胸元から見えた引き締まった身体に思わず私は目をそらしてしまった。
「貴女の着てるそのワンピースとても素敵です。
お茶を持って振り返った時僕は女優さんを連れてきたと思いましたよ。」
「ありがとう…実は今日、私の誕生日で花屋のご夫婦が私をディナーに連れてってくれたの。」
「なるほど、だからこのような服装を。」
「えぇ、まぁ…」
すると「彼」は私の腰に長い腕を回してゆっくりと自分の方ヘと引き寄せた。
「しかし悪い人間もいたものです。こんなに美しい女性を閉じ込めていたなんて…それに艶やかな黒髪も素敵ですね。
どうして黒髪に染めたんですか?」
「美容室に入ったはいいけど、どんな風にしようか迷ってた時に壁にたくさんの名女優のポスターが貼られていたの。
そこでエリザベス・テイラーのポスターが目について、それでね。」
「なるほど…でも今の貴女はそのエリザベス・テイラーでさえも裸足で逃げ出してしまうくらいの美しいです。
まさかクリスマス・イブの夜に巡り会えるなんて…」
腰に回してないもう片方の手で髪に触れて愛おしそうに「彼」は私を見つめてる…。
それだけで降る雪が全部溶けてしまいそうな勢いで私の胸はどんどん熱くなり、顔も火照ってるのがよく分かる。
「桃色に染めた顔も愛らしいですね…食べてしまいたいくらいだ。」
最後は小声で聞き取れなくて思わず素っ頓狂な返事をしてしまったがそれは後の祭りに終わった。
厚みのある柔らかい唇と私の唇が重なり声が出せなくなったからだ。
触れるだけのキスはあの時に一度だけした。
だけど、映画のワンシーンのような情熱的なキスでそれさえもどうでも良くなってしまった。
呼吸することさえも忘れてしまいそうなキスで「彼」は私を求めて、私もそれに応えようとした。
しばらくしてゆっくりと唇が離れた時、「彼」は私の首筋に唇を寄せた後に耳元で囁いた。
「今夜から貴女は自由の身だ…。だけど僕は貴女を離すつもりはありません。」
私は「イエス」の意味を込めて「彼」の頬にキスをした。
