Good old fashioned lover boy
第11章 懐かしのラヴァーボーイ
ロランが立ち去り、残ったのは私と「彼」だけになった。
だけど私は「彼」に会わせる顔なんてない…。
私を脅かすものが無くなった安心感よりも、過去に犯した過ちに対する報いが来るのではないかという不安が波のように押し寄せてきたのだ。
「とにかくこの場から逃げたい…」と心が叫んでるように感じた私は大通りに出ようと一歩踏み出したその時、「待ってください!」と「彼」に制止されてしまった。
ゆっくりと「彼」が私の元へと近づいてくる…。
きっと私も「あの男」のように殺されるのかもしれない…。
そう思いギュッと目を閉じると身体に感じたのは人肌の温もりだった。
予想とは違う展開に驚いてゆっくりと目を開けると彫り立ちの深い「彼」の美しい顔が見えた。
「こ、これは…どういうこと…?」
すると「彼」が私の頬に手を添えながら言った。
「やっと貴女に会えた…」
「わ、私に…?でも私は…」
「裏切った、と言いたいのでしょう?」
言葉を遮るように「彼」が言うと私は黙って頷くしかなかった。
「確かに僕は貴女がいなくなったと知った時は絶望の底へと叩き落されたように感じました。
何故なら目を覚ました時、最初に貴女の顔が見たかったからです。
だけどこうしてまた貴女と巡り会えた。
僕はこんな奇跡が起きるなんて…今もまだ信じられません。」
こんな私に「会いたかった」って言ってくれた人は生まれて初めてだった。
どんな目的であれ私のことをずっと探していたなんて…。
嬉しさと手間をかけさせてしまった申し訳なさから瞳から一筋の涙が溢れ落ちた。
「泣かないで美しい人。ここで話すよりも近くに車を停めてあるんです。
一緒に来てくれませんか?」
「彼」の問いかけに私は首を縦に振った。