Good old fashioned lover boy
第11章 懐かしのラヴァーボーイ
目の前に現れた大きな家に私は頭の中がちょっとした混乱を起こしていた。
若くしてこんな大きな家に住んでるなんて想像がつかない…。
「何してるの?早くこっちにいらっしゃいよ。」
ガレージに車を停めたトリッシュが外に出てきた言った。
「あっ、ごめんなさい。だけど素敵な家ね。
ここに一人で住んでるの?」
「いいえ、婚約者と住んでるのよ。
元々は私の彼が所有してた家で、そこに私も住み始めたの。高台だし、安全だってね。
…さあ、早く中に入ってちょうだい。」
そう言ってトリッシュが鍵を開けて一緒に中へと入った。
玄関を抜けて現れたのは、シンプルな家具でまとめられ、窓から海が一望出来るリビングだった。
こうやって部屋から海を見ると、両親と長い休暇に遊びに行ったシチリアの祖父母の家を思い出す…。
「部屋から海を一望出来るなんてシチリアの血を引く私からしたら羨ましいわ。」
「晴れてたらもっと綺麗に見えるわよ。
でも、私がここに来るまでカーテンで閉ざされてたの。」
「どうして?こんな素敵な景色なのに。」
「彼も私もお互いに色々あったからね…。
でも、その前にあなたが私の前から姿を消したワケを話してもらいますからね。」
「だから、この家に招き入れたってこと?
でも良いの?彼がいないのに勝手に人を呼んだりして。」
「何もやましいことなんてしてないし、あなたは特別だから良いの。」
そう言って彼女はテーブルに紅茶とドルチェを置くと私に尋ねた。
「ミルクと砂糖は?」
「両方いただくわ。」