Good old fashioned lover boy
第11章 懐かしのラヴァーボーイ
店の奥で着替えてパードレと軽いハグをして別れた直後に彼女が運転する車が店の近くに停車した。
そのまま車に乗ったはいいものの、何を話したらいいのか分からない気まずさが押し寄せてきた。
重たい空気が車内に流れてたところを断ち切ったのはやっぱり彼女だった。
「ここでずっと停まってるのも迷惑だから別の場所へ行きましょう。」
「そうね…。」
車は花屋がある通りを抜け大通りに入ったところで私は彼女に話しかけた。
「車の免許はいつ取ったの?」
「20歳の時よ。歌手を辞めて少し経った頃にね。」
えっ、歌手を辞めた…?
彼女の歌声を聴く為に多くの人々が集まるくらい人気だったはずなのに、どうして…?
いてもたってもいられず私は辞めた理由を聞いてしまった。
「ねぇ、どうして歌手を辞めてしまったの?」
「とある事件に巻き込まれちゃってね…。
でも、今は音楽の世界から身を引いたことに後悔していないわ。
こうして日の当たる暮らしが出来てるし、何よりあなたと再会出来たのだから。」
先ほどまで矢継ぎ早に質問攻めきた時とはうってかわって再会を喜んでるという言葉が聞けて私は安心した。
車は大通りを抜けて街の中心地まで来たがそこも抜けてやがてネアポリス郊外の方へ進んでいた。
そこからまた数分経った頃、車はあるセキュリティの厳重そうな大きな門の前で停車した。
トリッシュが一度車から降りてセキュリティを解除すると門は自動で開き、彼女は再び乗車して車を走らせた。
「着いたわよ。」
そこにあったのは海辺の近くでよく見かける白壁が印象的な大きな家だった。