Good old fashioned lover boy
第11章 懐かしのラヴァーボーイ
「どうしたマードレ何かあったのか?」
ブチャラティが心配そうに話しかけるとマードレは「ハッ」と顔を上げた。
「あっ、別にあの子が何か悪いことしたとかそういう訳ではないのよ。
むしろ色々と手伝ってくれて私達が感謝するくらいだわ。ただ…」
ここまで話したところでマードレは「彼女」が接客してる若い男性へチラリと視線を向けた。
「あの男はこの店へよく来るのか?」
「ええ、でもあの子が休みの日は姿を見せないわ。
…単なる私の思いこみかもしれないけど、どうもあの男は何か目的があってあの子に近づいてるとしか思えないのよ。
それも、あの子に結婚を申し出たいとかそんなロマンチックなものじゃない何か別の目的で…。」
「別の目的か…」
「でも、もしかしたら私の思いこみかもしれないからそんな真剣に受け止めなくて大丈夫よブチャラティ。
話に付き合ってくれてありがとう。」
「あぁ、また何かあったら教えてくれ。」
少し離れたところにいる2人は傍から見れば店員と客の関係にしか見えない…。
だが、それがもし組織の下から姿を消した「彼女」だったとしたらどうだろう…。
そして「彼女」と楽しそうに会話をしてる若い男性がロランだったとしたら…。
「彼女」の行方は依然として不明だがロランの方はネアポリス付近に潜伏してるのではないかという情報が最近になって組織の元へと舞い込んできた。
この付近に奴がいるとなれば「彼女」もそう遠くにはいないはずだ。
よく見ると「彼女」は夫と共に事故死したマリア・カルディナーレにどこか似ているような気もする…。
(ミス・ヴィヴィも髪型こそ違えど彼女の母親にどこか面影はあった。)
ブチャラティは誰にも悟られないよう持っていた携帯で彼女の横顔を何枚か撮影した。
そして何もなかったかのようにマーガレットの花を買うとその店を後にしたのだった。