Good old fashioned lover boy
第11章 懐かしのラヴァーボーイ
見た目を変えた後、街へ出て誰かとすれ違うと何かしら声をかけられるようになった。
お店で仕事してれば「Chao,Bella」と男性から挨拶されたり、口説き文句を言ってくる人も増えた。
ロマンチックな言葉を口にするのはこの国では日常茶飯事だからスルーしていたけど、中には「一緒に教会へ行こう」と大胆な言葉を投げかけた人もいた。
人は何か一つ変えただけでこんなにも日常が変わってしまうのかと私は驚くばかりだ。
マードレとパードレも「綺麗だ」と褒めてくれて私は自分を変えるとこんなにも幸福感が増すのかと生まれて初めて知った。
ある日、いつものようにお店で仕事をしているとある一人の男性が声をかけてきた。
彼の名前はエミリオと言い、北部の生まれで仕事の関係でネアポリス周辺に滞在してるとのことだった。
彼は空いた時間があるとこうしてお店に顔を出して私によく話しかけていたのだ。
「やあ、ヴィヴィ今日も綺麗だね。イヤリングがとっても似合ってるよ」
「ありがとうエミリオ。貴方も素敵よ。」
「それはどうも。実は今日、人と会う約束があるのだけど、どんな花をあげたら良いかな?」
「あぁ、それなら…」
こうして私は彼と会話をする時間が束の間の楽しみとなり「あの人」との日々が心の奥にしまいこまれたのだった。