Good old fashioned lover boy
第9章 輝ける者の秘密
今の私は「彼」の腕の中にいる…。
車から降りようとした瞬間にドアノブに手をかけた瞬間の出来事だった。
私の左手に絡まっていた蔦は握っていた彼の左手にも巻きついて簡単には離れられない。
そして腰には細い彼の右腕でぐっと引き寄せられてこれもまた離れられない。
つまり私は完全に「彼」に捕まってしまったのだ。
やはりこれも「罠」だったのかと不安に駆られたがそれはすぐに消え去った。
「こんな事をするのはあまり良くないということは分かってはいます。
でも、僕はこうして貴女と話していると色々な欲が泉のように湧いてくるのです。
もっと話したい、もっと触れたいって。
頭では危険だと理解してても、その先に貴女がいると僕は…どうしても手に入れたいと思ってしまうのです。」
耳元で告げられたまさかの告白に私はどう返事をしたらいいのか検討がつかなかった。
それよりも告発から変わったまさかの展開に私の頭は情報処理が出来ていないのも事実だ。
「彼」が私なんかに…どうして…?
この疑問だけが頭の中をぐるぐると駆け回っている。
「驚かせてすみません…。
でもこれは僕の本当の気持ちなのです。」
そう言って彼は淀みのないあのエメラルドグリーンの瞳で私をまっすぐ見つめる。
蔦はいつの間にか消え去っており、先ほどよりも強い力で私の手は握られていた。
ここで私もようやく理解したのだ。
私は「彼」に恋をしているのだと…。