第2章 ②不思議ブレスレットで…【尾形に激写スナイパーしてもらった】
それは直ぐに分かった。
派手な声色で、確かに左前にある大きな木のてっぺんでさえずっている。
「ルリビタキか...」
目を細めながらジッと観察する。
和栗もベランダへ出てきた。
「やっぱりー?!青い?青い?」
「いや、まだ尾の方しか青くない。若いオスだろう」
「いいなー、そこまで見えるんだー。あたし目が悪いから黒いシルエットしか分かんないよー」
「そんな珍しくもないだろう、森の中じゃよく居る」
「イヤイヤここ大都会東京なんスけど!珍しい渡り鳥さんなんスけど!!」
「...」
「何その可愛そうなとこに住んでんな、みたいな顔!」
和栗はブツブツ文句を言いながら三脚を立て、バズーカーと呼ばれるレンズを着けると、カメラの設定をしてから尾形に渡した。
「はい、この上のボタンを押せば撮れるから。ここ回すとピント調整」
「でっけぇ銃だな」
「因みにこのレンズ、弟から借りてるから壊さないでね!」
「フッ、アホ。お前が触るより確実に安全だ」
「キィイイ!いちいち腹立つこんのボケナス尾形!」
尾形は片手で、和栗の両頬を割と強めに掴んだ。
和栗も負けじと睨み返す。
「お願いします尾形上等兵殿、だろ?」
和栗はべーっと舌を出すと、尾形はソレを指で摘んだ。
「はぇっ!」
「今度きたねぇ口きいたら引っこ抜くからな」
「....」
この人ならやりかねんと思った和栗は、反省の面持ちで押黙る。
「冗談だ」
尾形はフッと僅かに笑うと、和栗の唇に軽くキスをした。
「...上等兵殿、ずるいでござる」
「しつけだ」
「ぐぬぬぬ...」
尾形はレンズを覗き込むと、慎重にダイアルを回し、何枚か撮り出した。
それからまた微調整して、何枚か連射する。
「打ち落とせたぞ」
「あざーす」
和栗が映像を確認すると、確かに尾だけ青い、ルリビタキが写っていた。
「すっごーい!マジで撮れてる!ありがとう!かわいいい!」
「逆に何で撮れないのかが分からんな」
「いやー、拡大して何処にいるかカメラで探してる間にどっか飛んでっちゃうんだよー。撮れてもピンぼけとか」
「殺気でも立ってるんだろうよ」
「いやそれは尾形さんの方があるでしょ!」
「殺しに罪が無ければ殺気などたたん」