第2章 ②不思議ブレスレットで…【尾形に激写スナイパーしてもらった】
「...もっもおお!じゃあ行きますよ!」
尾形の服の裾を掴むと、和栗は木の幹に片足を突っ込んだ。
そう、この不思議なブレスレットをしていれば、こんな風にいとも簡単に2次元と3次元を行ったり来たりできるのだ。
木の幹を通り抜けると、開いた漫画からポンと2人飛び出した。
ここは和栗の部屋だ。
下には土足で飛び出てもいいように、ビニールシートが引いてあった。
後ろにいる尾形は、肩に銃を担ぎながら器用に靴を脱いでいる。
「あーっ!ちょっと銃!」
尾形は素知らぬ顔をする。
「持ってきちゃ駄目ってこの前も言ったじゃん!銃刀法違反であたし捕まったらどうしてくれんねん!」
和栗が銃を掴むと、尾形は肩紐と銃を持つ手に力を入れた。
「離っ...!!すごい力だ!」
猫ならさしずめ、大好きなオモチャを取られそうになって「ヴヴヴ~!」と唸っている瞬間だろう。
「誰も取らないから!あたしがどうこうしない限り絵は勝手に動いたりしないから!」
しぶしぶ尾形は和栗に銃と玉の入った袋を渡す。
こういうの渡してくれるってことは、ちょっとは信用されてるって思っていいんだよね?
和栗は開いていた漫画の上に荷物を運ぶ。
「おっもい!」
そこでパっと手を離すと、銃は漫画の中に落ちていった。
ページに浮き上がってきたのは、尾形の銃と弾丸袋だ。
「よっし」
それを見た尾形は、立体的になった自分の身体をしげしげと眺める。
「つくづく、1番自分が不気味だぜ」
「そうだろうね」
尾形はクローゼットに置きっぱなしの現代服に着替えると、和栗はその横で脱いだ服を畳んだ。
「やっぱクリーニング行ってくる!今なら午前中出せば今日の夕方出来るから!」
「アホ、やめろ」
「軍服型崩れしたらやだもん!あ、そのマントみたいなのはうちで洗うからー!」
「血で勘ぐられても知らねぇぞ」
「....はい、当初の予定通り家で洗います」
尾形は鼻から息を吐いて、呆れ顔で上から見下ろしてくる。
「なんかムカつく」
和栗は何かブツブツ言いながら、洗濯機の方へ歩いていった。
「で、鳥ってのは何処にいるんだ」
「ベランダ出てみてー!綺麗な声するからー!」
尾形はゆっくりとベランダのドアを開けた。