第1章 不思議ブレスレットで2次元行ってみた【尾形とゲーセン】
時々意味不明なことを言う和栗は、基本スルーされている。
「で、何処なんだ。さっさと教えろ」
直ぐにでも帰りたい尾形は少し苛立った様子だ。
「あ、これこれ!」
目的のものが1番近い入口から入ったので、左にそれは設置されていた。
「ガンシューティングげぇ〜むぅう!」
大きな銃のオモチャを抱えながら、和栗は得意気である。
「何だこの妙ちくりんの銃は。ただのガキの遊具じゃねーか」
そう言いつつも手にとって、興味津々で眺めている。
「実銃は免許必要なんですぅー、サバゲーも道具買い込まないといけないしー」
ブツブツと意味不明なことを呟いているのは無視する。
「何で繋がってんだ」
「それはホラ、電気で動いてるし、何より繋がってないと危ないし持ってちゃう人もいるかもだし」
「玉はどこから入れる」
「あ、入れなくても打てるというか、架空で入れるというか。ここのレバーを引くと玉が補充されるというか?」
「さっぱり分からんな」
「まぁまぁ一緒にやろうぜ!スナイパーさんがドコまで進むのか気になるし!」
和栗は2人分のお金を入れると、シューティング開始画面まで進めていく。
横の尾形は、オモチャだというのに本格的な構えをしてスタンバイしていた。
「おい、照準器がないぞ。何だこの四角い出っ張りは」
「あー照準器っぽい飾り?」
「何処で狙うってんだよ」
「弘法筆を選ばずって言うじゃないスかー」
「喧嘩売ってんのか」
「滅相もござせん」
尾形は仕方なく、見様見真似で目の前の的を撃っていく。
「おぉおー!すげー!」
「打ったところとズレてる」
「あーまー縁日の射的みたいなもんだし?」
「チッ」
「あぁあ!あたしやられた!尾形さんあとは1人でー!」
ムキになってきているので、彼は聞いていない。
「おおおすごい!すごい進んでるし何その回復アイテム!知らなかった!」
「横でゴチャゴチャ喋るな」
和栗のハイテンションな声と、かなりステージを進めている尾形の周りには、知らぬ間に人だかりが出来ていた。
「なにあの人、陸自の人?」
そんなことを囁く人もいる。
いえ、2次元の軍人さんです。
「えっ!うそこれラスボス?!初めて見た!」
和栗はすっかりゲーム実況動画を見ている気分だ。