第1章 不思議ブレスレットで2次元行ってみた【尾形とゲーセン】
しかし、さすがの尾形も、ゲームのラスボスにはあとちょっとのところで勝てなかったようだ。
中央にはGAME OVERの文字が標示され、周りに居た人達は「あぁ〜」と残念そうに呟いて立ち去っていった。
山猫は気に食わないといった面持ちである。
「すごいすごい!さすが尾形さん!」
けれど隣の和栗は、手を叩いて大喜びしている。
「帰るぞ」
少し機嫌が良くなった尾形は、前髪を撫で付けてその場を後にした。
「了解であります!」
「だから、手が逆だ」
「えっ!あ、そうか!」
わざわざ右手で敬礼し直した和栗の、左手を掴んで歩き出す。
「ダッ!?」
「もっとかわいくできねぇのかてめぇは」
「て、てめぇ?!なんだとこのクソおがにゃん!」
「ははっ...よし、分かった、帰ったら覚えとけよ」
「えちょっと、漫画で根に持つ性格じゃないって...!」
満面の笑みを浮かべた尾形は、ギチギチと和栗の手を握り直した。
「あだだごめんなさいごめんなさい」
少し乱暴だが、尾形の背中はどこか楽しそうだった。