第1章 不思議ブレスレットで2次元行ってみた【尾形とゲーセン】
今日、山猫尾形に...尾形さんにやってもらいたいことがあって、現代トリップしてもらっています!
そう、ここはゲーセン!
ジャカジャカタイジャカ!コデジャァフルコンボ!ジャカタァーッ!アソブドンジャジャジャガラガラーッ!!
「...耳がやられる」
自動ドアが開いた途端に溢れ出るカオスな爆音。
山猫はげんなりした顔で既に怯んでいる。
「大丈夫だ、しばらくすると麻痺してくるぞ!」
腕を組んで自信満々に言い放つ和栗を見た尾形は、踵を返す。
「まてまてまて!まって!」
慌てて腕を掴むと、ハァとため息をつかれた。
「これの何処に未来の銃があるんだ、俺はごめんだぜ」
「やだーー!これやって欲しくて連れてきたんだぁあ!自宅からの交通費かかってんだぞー!」
「....」
ゲーセン前でのそんなやり取りをみたカップル達は、クスクスと笑って去っていったり、変な目で見てきたり。
尾形はちゃんと現代の格好をしているので、明治の服を着てきているせいではない。
そして腕を引っ張り続ける和栗は、まるで言うことを効かなくなった子犬。
根負けした尾形は、妥協案を出した。
「なら耳栓をよこせ」
「承知した!」
左手で敬礼した和栗は、道路向かいのコンビニに駆け込んでいった。
尾形は電柱にもたれ、ポケットから現代で買った煙草を出す。
この小さな葉巻きの匂いも、案外気に入っていた。
和栗からもらったジッポをパチンと開けると、それに火をつけて吸い込む。
フーッと吐き出した煙は、しばらくすると消えていく。
自分が今ここに居る事も、そんなことのように思える。
カシャーッ
横から変な音がしても動じたりしない。
この日本帝国は昔と比べれば格段に安全だからだ。
それに何しろ、この音には慣れた。
「撮んな」
横を睨めば、コンビニから帰ってきた和栗がニヤニヤしながらスマホを構えている。
「老後の楽しみであります」
何故かまた敬礼をした和栗だが、さっきから手が反対である。
「アホか」
「アホじゃねーよ!」
和栗からコンビニ袋を取ると、黄色の小さい栓を耳にねじ込んだ。
それから再度ゲーセンに入ってみるが、音が少しくぐもっただけで、たいして変わらない。
「役に立たん...」
「えっ白石並み?!」