第1章 噂話、の筈だった。
「じゃあ各自今指示された食料と物資を調達次第船に戻るって事で!その後は好きにして構わねぇってオヤジから言われてるから、ログが溜まるまでは自由行動な!」
「但し、住人に迷惑かけたり騒ぎを起こしたりしたら即連れ帰るからな。ハメ外し過ぎないように気を付けろよい」
「はい!じゃあ解散~!買い忘れすんなよ~!」
サッチがパンっと掌を叩いて話を終わらせると、隊員達はそれぞれ指示された物を探しに村の商店街の中へと消えていった。
「さてと、じゃあ俺達も行くか」
「そうだな、薬屋と本屋、あとお前は調味料探しと武器屋だったか?」
「あぁ、コイツが最近調子悪くなりやすいから、一度ちゃんと見てもらおうと思ってな」
腰に下げた二本の剣に手を添えて、少し困った様に笑う。
もしも戦闘中に使えなくなってしまったら、怪我では済まないかもしれない。
毎日手入れは欠かさないが、こうやって島に着いた時に武器屋でメンテナンスをして貰わないとわからない不具合があったりするものだ。
「なら先に武器屋行って見てもらうか。どうせ時間かかるだろうし、その方がお前も動きやすいだろい」
「おー、そうさせてもらうわ。どうせ俺は荷物持ちしないといけないんだろうしな」
「心配すんな、俺も調味料くらい持ってやるよい」
「マルコはもう少し医学書やら薬品やら買う量を考えてくれよな」
「…医学書はともかく、薬品は消耗品なんだから仕方ねぇだろい」
そう言いながら、目の前の商店街へと足を踏み入れたのだった。
武器屋は商店街に並ぶ店の一番奥にあった。
ここに辿り着くまでに色々な店があったが、どの店もそれなりに繁盛している様だ。
俺達の様に物資や食料の補給で、外から来る船が立ち寄る事がよくあるのだろう。
店の扉を開けると、カランカランとベルの音が鳴り響いた。
店内の棚には新品の武器から修理用の部品まで綺麗に並べてあり、品揃えも豊富な事がわかる。
「いらっしゃい、お兄さん達。今日はどんな御用かな?」
店の奥から出てきたのは、眼鏡をかけた穏やかそうな初老の男性だった。
「コイツの修理と、あとはメンテナンスして貰おうと思ってきたんだけど、時間かかるか?」
「その剣かい?ちょっと見せてごらん」
そう言われたサッチは、腰に下げていた二本の剣を店主に渡して、何か思い出した様に俺の方を見た。