第3章 答え合わせと、これからの話。
数時間前、武器屋の店主…元い少女に実験をしてきた張本人の研究者は、少女と自分にこれまで起こった事を話し始めた。
最初にいたのはここから遠い遠い海の向こうにある、小さくて辺鄙な島。元々は一般的な薬を生産しながら、悪魔の実の能力についての研究を続けていた。
そして研究所の所長が、ある時から人外な実験をし始めるようになった。
最初は研究用マウスだったのが、段々犬や猫、鳥に変わっていき、遂には人身売買に手を出し始め、そうして買った子供たちに研究した薬を飲ませて観察をしていた。
しかし一体なんの研究なのか、研究所職員の誰一人として詳しく説明された者は居らず、また聞こうとすれば有無を言わさず暴力で捻じ伏せられ、大量の仕事を割り振られ、そして指示されたままに子供達に実験を行うしかなかった。
毎日研究所内に響く子供達の鳴き声、呻き声、叫び声。
職員の多くはストレスで病んでいくか、狂ったように実験を繰り返していくかが殆どだった。その中で、自害していく者も少なくなかった。
それに耐えられず、途中で研究所を逃げ出す職員も多くいた。見つかればまた研究所に連れ戻され、地獄のような場所で、地獄のような実験を延々と続けなければならなかった。
職員だけではなく、子供達にもそれは当てはまった。
毎日決まった時間に、決まった食事と薬を取るように強制され、その後は勉学、戦闘訓練。それ以外の時間は日の当たらない部屋という名の檻に入れられて毎日を過ごすという、囚人と変わらない生活を強いられた。
家に帰りたい
家族に会いたい
外に出たい
明るい場所に行きたい
毎日子供達が叫んでも、誰もそれに応えず、見て見ぬふりをしていた。
そうして過ごす内、子供達に飲ませていた薬は悪魔の実の能力を改良した物だという事を、偶然にも知ってしまった。
その時点で残っていた子ども達は、少女を含めた3人だけ。
急いで子供達の元へと向かった時には、既に子供達は誰も居なくなり、檻の中には生々しい血の跡だけが残っていた。
そして、その研究所の所長が、檻の中で最後まで生き残った少女に、吸血鬼の力を模した能力の薬を与えたのだ。
急いで研究所内を探して漸く少女の元に辿り着いた時、そこには息も絶え絶えの所長と、鋭く伸びた爪と口元を真っ赤に染めた無傷の少女がいた。