第3章 答え合わせと、これからの話。
シャワーって、暖かい水が沢山出てくる、あれの事かな??
前に使った事があるから覚えてる。
目の前でキラキラ輝く小瓶を揺らしながら笑顔で此方を見つめてくる、今まで見た事の無い程綺麗な女の人。
じっと見つめていたら、微笑みながらスっと手を差し出して口を開いた。
「会ったばかりの人が沢山いて不安になるのは当たり前だと思うけど、この船にいる人達は貴女の事をどうこうしようなんて思ってないわ。そんなに気を張らなくていいの。ずっとそんなふうにしてたら疲れちゃうわよ?」
不思議なくらい、その言葉がスっと身体に入り込む感じがした。
マルコもサッチも、あの白ひげという名の父さんの言葉もそうだった。
なんだかポカポカして、ホッとする。
"気を張らなくていい"という言葉を聞いた時、自分がいつでも全力でこの場から逃げ出せるように、指の先まで力を入れていた事に気が付いた。
自分でここにいたいと言った癖に。それを許してもらった癖に。
みんなは私の事を受け入れてくれているのに、当の私がいつまでも逃げ出そうとしていたら何も変わらない。変えられない。変えられるはずがない。
大きく息を吸って、吐いて。もう一度、吸って、吐いて。
私を見つめる女の人の眼を真っ直ぐ見つめ返して、シーツを掴んでいた手を緩めて目の前に差し出された手に伸ばすと、指先同士が少しだけ触れて、その指をキュッと握った。
心臓の音がドクンドクンと耳に響く。
大丈夫。この人は怖くない。この船の人は、怖くない。
目をギュッと瞑って自分に言い聞かせていると、何かの花のような香りがふわりと全身を包み込んだ。
「はい、よく出来ました。いい子いい子。」
気付いた時には、震えていた私の体は優しく抱きしめられていて、温かい手で頭を撫でられていた。
頭を何度も何度も優しく撫でて抱きしめてくれている手は、決して私の事を傷付けようとする手ではない。
それが嬉しくて、でもなんだか少しむず痒くて、気を抜いたらまた泣きそうになってしまったから、ぐしゃぐしゃな顔を見られないように自分の顔を目の前の身体に押し付けて隠した。
サッチの「良かったな」という声と、頭上から聞こえてくる小さな笑い声がとても心地いい。
胸のあたりでつかえていた物が溶けて軽くなるような感覚は初めてだったけど、少しも嫌じゃなかった。