第3章 答え合わせと、これからの話。
「じゃあ行きましょうか。サッチ隊長、この子少しの間預かりますね」
「おう、宜しくな。マルコには俺から言っとくから」
クイッと服の裾を引っ張られた方を見ると、少女が白い紙を差し出した。
『まるこ かえってきたら わたしのぶんも おかえりって いっておいてね』
「わーかったって。ちゃんと伝えといてやるから行ってこい。姉貴が待ってるぞ」
くしゃりと頭を撫でて背中を押すと、少しはにかんだ様に口元を緩めてナースの方へと駆け寄っていき、2人は食堂を後にした。
姿が見えなくなったのを確認してから、椅子に座って一息つく。
静まり返った食堂を見渡しながらお茶を飲み、マルコが少女とナースのやり取りを聞いたら一体どんな顔をするだろうかと考えていると、閉じたはずの扉が開き、今まさに思い浮かべていた人物が入って来た。
「あ、マルコ!思ったより時間かかったな?何かあったか?」
「…アイツは?」
「嬢ちゃんならついさっきナースと一緒にシャワー浴びに行ったばっかりだよ。ったく羨ましいよなぁ~?」
「…そうか。なら今からちょっと出掛けるよい。」
「は?今帰ってきたばっかりなのにか?」
「アイツを船に乗せる前に、お前にもちゃんと話しておきたい話があるんだよい。だから一緒に来い。」
何の話を?話ならここじゃダメなのか?と聞き返そうとしたが、マルコの険しい表情を見て、何となくだが予想がついた。
「あー…うん、それじゃあさっさと行って終わらせるかぁ~」
なるべくアイツが戻ってくるまでに船に帰ってこよう。
そして今日船であった事を、アイツと一緒にマルコに話して聞かせてやろう。
その為に、これから聞く話も、聞かされるであろうこの先の話も、どんな内容であろうと受け入れる覚悟をしなくてはいけないと、改めて気を引き締めた。
「この話終わって帰ったら、ちゃんとアイツに会ってやれよ?いつ帰ってくるのかって寂しがって大変だったんだぞ?」
「サッチが一緒にいただろい?」
「…お前それ本気で言ってんの??」
「まぁ、確かに慣れない場所に急に置いていくのは少し怖かったかもしれねぇな。何か土産でも買って帰るか」
真面目な顔で顎に手を当てたマルコの口から出たのは、想像通りの自覚の無い答え。
知らぬまに小虎の育ての親となりつつある自分に、果たしていつ気付くだろうか。