第3章 答え合わせと、これからの話。
今の今まで向かいの席に座ってメシを食って、俺と筆談で会話していた少女の姿は、目を離した一瞬の隙に消えていた。
勿論食べ終えた皿や、少女が使っていたペンと紙はそのまま残っているから、ここには確かにアイツが居たということは間違いない。
「え?何処行った?おーい?」
呼び掛けてみても返事が帰ってくる筈も無く、自分の声だけが食堂に響く。え、マジで何処行った?まさか船から逃げ出した…とかないよな…??そんな事になったらマルコになんて言われるかわかったもんじゃない。
「サッチ隊長、足元に何か落ちてますよ?」
ナースにそう言われて足元を見ると、テーブルの下から見覚えのある白い布切れがチラッと顔を出していた。
…まさかと思いながらそーっとテーブルの下を覗き込むと、そこにはシーツを頭から被って隠れる少女がいた。
「…何してんだお前は」
ため息をつきながらそう聞くと、ビクッと身体を震わせて縮こまる。…そうか、ナースが入ってくるのがわかったから隠れたのか。
この船でマルコと俺以外でまともに会ったのはオヤジだけ。
他の奴らとはまだ顔を合わせていないから、当然といえば当然の反応だろうけど、それにしても素早い。さすが森育ちとでも言うべきか。
「さっきからどうしたんですか?テーブルの下に何か…」
そう言ってナースは俺の横に並んでしゃがみこんでテーブルの下を覗き込んで固まる。
お互いばっちり、視線があったようだ。
「あ~…いや、コイツはマルコの患者で…」
「…い」
「え?」
何て言ったのか聞こえなくて聞き返すと、目を輝かせてこう言った。
「ちっちゃくて可愛い…!」
満面の笑みで目を輝かせズイっと近寄るナースに、ビクッと身体を震わせ、警戒する少女。尻尾があれば毛が逆立って膨らんでいるだろう。どう見ても怯えている。
「オヤジ様から女の子が船に乗るって話を聞いて来たんです。マルコ隊長とサッチ隊長だけじゃ心配だから見に行けって。」
「え?そうなの??」
「聞いた話じゃこの子、ずっと森に居たんですよね?服だってボロボロだろうし、シャワーも入れてあげたいですし…。いくら小さいからって言っても女の子ですから、隊長達より私達が付いててあげた方が良いかなと思って。」
確かに。最初に連れて帰ってきた時にマルコが体を拭いていたけど、一度ちゃんと体を洗った方が良いだろう。