第3章 答え合わせと、これからの話。
体が揺れている感覚で目が覚めた。
気付いたら誰かの背に乗せられて、暗い道を走っていた。
"ごめんね、助けられなくてごめんね"
"痛かったろう、苦しかったろう、怖かったろう"
体に力が入らず、首を動かす事も出来ないから、ただ声を聞くだけになる。
それでも誰かは話し続けた。
"ごめんね、本当にごめん。私が臆病で弱かったから、こんな事になってしまった"
何を謝っているんだろう。
私はあなたに叩かれたことも、怒られたことも無い。
あなたが私に謝ることなんてないでしょう?
"逃げよう。こんな所から出て、もう自由に生きていいんだよ"
暗い道を走りながら、何度も何度もごめんと繰り返された。
段々それが子守唄のように聞こえてきて、瞼が自然と重くなっていった。
「ん?起きたのか?まだ寝ててもいいぞ~」
再び目を開けると、私は誰かの背中の上じゃなくて、また医務室のベッドの上だった。
窓からは陽の光が差し込んでいて、明らかに夜ではない。
ずっと私に謝っていた声の主はサッチではなかったのは確かだけど、なんだかずっと前から知っていたような、夢から醒めた今が現実の筈なのに、ふわふわするような、モヤモヤするような、なんて言えばいいかわからない変な感覚が残って落ち着かなくて、部屋をキョロキョロ見回した。
(…前にも、同じ事があった、ような…)
思い出そうとしてみても、全然検討がつかない。結局、あの夢は何だったんだろう?
「どした?寝ぼけてんのか?」
起きてすぐにキョロキョロしたり、首を傾げたりしていれば、恐らく誰からでも寝ぼけていると判断されるだろう。
「そういやもう昼だけど、何か食うか?食べたい物あったら何でも作るぞ?」
そう聞かれた時、タイミングよくお腹が鳴った。流石になんだか恥ずかしくて、顔が熱くなっていった。
「ックク…腹の虫で…返事するとか…お前…ブッ…クク…」
サッチは大笑いするのを堪えようと口元を抑えて目線を逸らしているけど、それはそれでちょっと失礼じゃないかなぁと思う。私だってお腹を鳴らそうと思って鳴らしたんじゃないのに、余計恥ずかしい。
「っはーわかったわかった、悪かったって。そんな顔膨らませんなよ~」
膨らんだ頬を摘まれて、横に伸ばされた。