第3章 答え合わせと、これからの話。
目的の場所へ向かう道中、船に残してきた少女は今度こそ大人しくしているだろうか、上手く過ごせているだろうかと考えていた。
なるべく早めに帰ろうとは思っているが、それはこれから会う人物との話がどう進むかにもよる。俺の予想では、そこまで長くはならない筈。1つ深呼吸してから目の前にある店の扉を開けて、中へと足を踏み入れた。
カランカランとベルの音が店内に響き渡り、少し時間を置いて奥から店主が顔を出した。
「いらっしゃい…おや、昨日のお兄さん。お仲間さんの武器なら、もう少し修理に時間を貰えると嬉しいんだけど、急ぎかな?」
やって来たのは、サッチと訪れた武器屋。
「いや、今日はちょっと聞きたい事があって来たんだが…今時間大丈夫かよい?」
「あぁ、構わないよ。コーヒー入れてくるから、座って待っていてくれるかな?」
「…だとよい。じゃあお邪魔するよい。」
そう言って店に入ると、コーヒーを入れに戻ろうとした店主の目が見開かれた。
「ラグ…」
「…久しぶり、叔父さん。」
二人の間には何処と無く気まずい空気が流れていたが、気付かないふりをして椅子に腰かけた。
「…まさかお前がこの店に来るなんて思ってもみなかったよ。子供の頃以来じゃないか?」
「よく覚えてないけど…そうだったかも」
「店はどうだい?何か困った事があったりしてないか?」
そう聞かれると、ラグは少し体を強ばらせて口を噤んだ。その様子を見て、店主もまた何か察して顔を顰めた。
「…何があった?どんな事でもいい、話してごらん。」
此方に目線を寄越すラグに小さく頷くと、ゴクリと息を飲んで、自分にあった事を伝えるため重い口を開けた。
「…化物に、襲われて…血を吸われたんだ。」
「…何だって?」
話しながらコーヒーの準備をしていた手から、カップが音を立てて床に落ちた。
辺りに散らばった破片には目もくれずラグの方へ歩み寄り、肩に手を置いて目線を合わせようとするが、ラグの目線は一向に膝の上で固く握りしめている拳から動くことは無かった。
「血を吸われた?本当に?」
「…本当だ「あの子が私以外の人間の血を吸う筈無いだろう!?」
その言葉を聞いて弾かれたように顔を上げると、そこには泣きそうな顔の店主がいた。