第3章 答え合わせと、これからの話。
少女の顔は強ばったまま、助けを求めるメッセージを書いた紙を震えながらオヤジに見せていた。
オヤジはそれを一目見ただけで特に何も言わず、脇に置いてあった酒を飲んでいる。俺もサッチもその様子を黙って見る事しか出来ず、そのまま沈黙が続いた。その沈黙は、オヤジがジョッキを置いた音で破られた。
「おい」
「…なんだよい」
「面倒はちゃんと見ろよ。拾ってきたのはお前らなんだからな」
という事は、つまり。
「船に乗せても良いって事か…?」
「別に船に乗せるくらいは構わねぇよ。だが俺はハナッタレの面倒なんざみねぇからな。お前らが責任持って面倒見ろ。」
そう言って残っていた酒を飲み始めた。
少女は何が起こったのか分からない様で、大きな目を見開いて見つめていたが、紙を持った手を下ろしてゆっくりとオヤジの方へと歩いていき、しっかりとオヤジの顔を見据えて、深くお辞儀をした。
そしてまた紙に何かを書いて、オヤジに手渡した。
「ハナッタレにしては礼儀がなってるじゃねぇか、お前。」
手渡された紙を見てニヤリと笑ったオヤジは、なんだか機嫌が良さそうだ。
「お前も、今日から俺の家族だ」
"家族"という言葉にピンと来ないのか、キョトンとしたまま立ち尽くしている少女にサッチが声を掛ける。
「だってよ!今からここがお前の家で、この"白ひげ"がお前のオヤジ、お前は俺達の妹だな!良かったなぁ~!」
ワシワシと頭を撫でられながら状況を把握しようと必死になっている様子がなんだかおかしくて、俺もサッチも思わず笑ってしまう。
「サッチお兄ちゃんって呼んでいいんだぞ~」
「お前そんなキャラだったかよい…」
サッチはきっとこの船一の妹バカになるだろう。というか、既にそうなっている気がする。苦笑しながらその様子を眺めていると、少女と目が合った。
まだぎこちないが、大分柔らかくなった笑顔からは初めて会った時の刺々しい殺気は全く感じられず、猛獣でも化物でもない、ただの幼い少女だった。
「この船のヤツらみんなお前の兄貴で、家族で、味方だ。よろしくなァ」
すると、また新たに紙に文字を書いて俺達に向けて見せた。
『ありがとう ございます よろしく おねがい します とうさん まるこ さっち』