第2章 ケモノで、バケモノ。
「いっっっってぇぇぇな!!冗談に決まってんだろ冗談!!その位わかれよ!?」
「誰が幼女趣味だこのアホが!!てめぇの冗談はいちいち気に触るんだよい!!」
「大体鼻の骨折れてたらどうしてくれんだよ!?責任持って治せよ!?女の子にモテなくなったらお前のせいだかんな!?」
「女にモテる奴は鼻の形で決まんねぇから心配すんな。お前は大丈夫だろい」
「えっ何!?マルコお前やっぱりわかってんじゃんー!俺の魅力は鼻の形が不格好でも変わらない…ってそうじゃねぇよ話逸らすな!」
「煩いのが増えちまって悪ぃな。メシ食えるか?器は一度アイツが落としたけど中身は無事だから食べられるよい」
「あっ!それ俺が持ってきたのに!自分が用意したみたいな空気にすんな!」
(…この人達、仲悪いのかな)
私の目の前では、森で出会った2人が何やら言い合いをしながら私に食事を渡そうとしている。
言い合いする位だから仲が悪いんだろうと思っていたのに、そんな空気はこれっぽっちも感じなかった。寧ろ…
(…仲良し、なんだなぁ)
2人を見ていたら、なんだか胸の辺りがぽかぽかしてきて、今まで強ばっていた顔の力が少し抜けた気がした。
すると、2人とも言い合いをやめて驚いた顔で私を見つめてから顔を見合わせて、同時に吹き出した。
「お前笑えるんじゃねぇか!ずっと仏頂面だから心配してたんだぞ~!」
ご飯を持ってきてくれた人はそう言いながらわしゃわしゃと私の頭を撫でてくる。
今の自分がどんな顔をしているのか気になって、両手で自分の顔を触ってみたけど、いつもとの違いがよくわからない。
「ガキは笑ってる方が似合ってるよい」
怪我の手当をしてくれた人も、笑いながら私の顔を見てそう言ってくれた。
胸の辺りがずっとぽかぽかしてる。
なんでかわからないけど、この人達にもずっと笑っていて欲しいなと思って私も少し真似して笑ってみたら、なんだか体が軽くなった。
ぽかぽか、ぽかぽか。
心臓が動いて、身体中に血が流れて、冷えきっていた自分が暖まる感じ。
今までで1番"生きてる"感覚がした。