第2章 ケモノで、バケモノ。
一体これはどういう状況なのか誰か説明して欲しい。
森から連れ帰って来た白い虎の少女の容態を見に医務室へ向かったマルコ。俺も何か栄養のある物でも食べさせようと思って、お粥を作って医務室まで持ってきただけなのに。
扉を開けて目の前に広がる光景に、正直びっくりして固まってしまった。
眉間に皺を寄せている事も多いし、俺が怪我すると治療はしてくれるけど傷口に思い切り消毒液ぶっかけてくるし、興味の無い話には乗ってこないし、下の奴らからは怒らせると怖いと若干恐怖心を持たれている、あのマルコが。
泣いている少女をあやしている。
会ってからたった数時間程度しか経っていない、ほぼ他人の少女を。
マルコとの付き合いは長いけど、別に子供が嫌いとかではない筈。ただ、話し掛けられてもどう返していいのかわからないという風に困っている所を見た事はあるから、嫌いではなく単に苦手なんだろう。
そのマルコが苦手な子供をあやしているという、ある意味衝撃的な場面に出くわしたんだから、そりゃあ誰が見ても固まっておかしくないと思う。
現に俺は手に持っていたお粥が乗ったトレイを落下させた。
運良く器から中身が溢れなかったのも割と凄い気がする。こぼしたり割ったりしてたら絶対叱られるし。
その音にビクッと驚いて目を見開いた少女は、涙目のままマルコにしがみついて、影から此方の様子を伺っている。
森だと暗かったし髪長くて顔あんまり見えなかったけど、綺麗な目の色してるな~。
「…おいサッチ、コイツがビビってるだろ。さっさとその落とした飯拾えよい…そんで部屋入るなら入るでさっさと扉を閉めろ」
なんだいつものマルコだ。と一瞬思ったけど待った待った。ビビってる?え?その子が?そんな事まで分かっちゃうの?この短時間でそんな仲良くなったの??
「マルコ…お前、どうした…?大丈夫か?疲れたなら俺がこの子見てるから少し寝ろ?な?」
「てめぇは相変わらず失礼な事考えるヤツだなァ…」
いつもの様にヒクヒクと眉間に皺を寄せながら睨んでくるけど、腕の中にいる未だ涙目の少女を怖がらせないようにしているのが目に見えて分かる。
「…マルコお前…そうだったのか…」
「…?」
ポンっと肩に手を置いて、優しく声を掛けた。
「幼女趣み゛ッッッッ」
思い切り肘鉄を顔面に食らった。これ鼻折れてないよな?
…冗談だったのに。