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名前を探す物語。【ONE PIECE】

第1章 噂話、の筈だった。



「おいマルコ、あれって…」

「シッ、声出すな!」

少し目を離した隙に"ソレ"は森の奥へと走り去って行った。
俺達の足元にあった、ウサギの死体を奪い返してから。

確か森の奥には洞窟がある筈。今そこに居たのが噂の"白い虎"なら、洞窟に行く可能性が高い。

「一先ず今逃げたヤツ追うぞ。」

「それはいいけど、今のが化物か…?どう見たって…」

「…白い虎の方だなァ」

俺達の前に現れたのは、洞窟に閉じ込められている筈の白い虎。
しかし、その獣は化物が襲ったであろう獲物を加えて森の奥へと逃げていった。
色々と考える事はあるが、ここに来て初めて化物の正体をハッキリさせる重要なヒントになるかもしれない事に変わりはない。

そう思いながら足跡を追って森の奥へと足を進めていき、遂に噂の洞窟の前まで辿り着いた。
洞窟は崖の上にあった。下はすぐ海になっているのか、波の音がする。洞窟の脇に続いている獣道を行けば、昼間の武器屋の辺りまで出られるのだろう。

白い虎はこの洞窟の上から俺達を見下ろしている様で、さっきから闇夜に隠れて鋭い視線が突き刺さってくる。しかし残念な事にランプの灯りは既に切れていて使い物にならない上に、雲が月を隠して辺りは真っ暗で視界が悪い。

いつ攻撃されるかわからない為下手に動けなかったのだが、大きな風が吹いて月を隠していた雲が流され、目の前にある洞窟が月明かりで照らされた。

眩しくて思わず目を細めたが、洞窟の岩の上から見下ろしていた獣の方を見て、思わず固まった。

「……は…??」

「……どういう事、だよい…?」


俺達が見たのは、ボロボロの服を身に纏い、口元を血で染めた、白い虎と同じ瞳の色の、まだ幼い少女だった。

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