第14章 天女
天女の衣装を身に纏ったその女人は、羽衣のような薄布を靡かせて笛の音に合わせ、流れるような所作で舞っている。
顔は仮面を付けているので分からないが、見に纏う雰囲気が高貴で他を寄せつけぬ威厳があり、まさに天女が天から舞い降りてきたかのようである。
先程までの賑やかな場の空気が一瞬で変わり、村人たちも皆、この幻想的な天女の舞に見惚れている。
「綺麗……本物の天女みたい…」
女人は私の方を見ながら、ゆっくりと仮面に手を掛ける。
……仮面の下から現れたのは……
美しく化粧を施した、女と見間違えるばかりに美しい……信長様の顔だった。
白粉をはたき、鮮やかな紅を引いたその姿は、元より整った端正な顔立ちの信長様をさらに美しく彩っており、思わず息を呑む。
「っ、信長様???」
私の驚きようを見て、天女の顔で悪戯っぽく微笑みを浮かべている。
紅を引いた唇が艶々として艶めかしく、誘うように僅かに開かれる。
この世のものとは思えぬ美しすぎる姿に目が離せないでいると、ゆったりと舞いながら私の前へと来てくださる。
「っ、お綺麗です、信長様」
「ふっ、姫様、何か褒美を頂きたいが?」
「っ、あっ…ごめんなさい…えっと…何を差し上げればよいのかしら??」
「ふふっ、では…これを頂こう」
そう言うと信長様は、いきなり私の腕を引き、軽々と身体を持ち上げて舞台の上に上げる。
腰をぐいっと強く引き寄せられ、あっと思う間もなく唇を塞がれる。そのまま深く深く重ねられる。
美しい天女からの接吻に、殿方とではない不可思議な気持ちになる。
村の若い娘たちから「キャーッ」という黄色い声が上がり、周りの熱気がさらに強まったのを感じながら、信長様に身を委ねた。