第14章 天女
信長様たちの視察は滞りなく終わり、やがて辺りが夕闇に染まる頃には祭りの準備も整い、私達は舞台がよく見える特別席に案内してもらった。
周囲には篝火が煌々と焚かれ、舞台を明るく照らし出しており、幻想的な雰囲気が溢れていた。
「楽しみですねっ!信長様」
「ふっ、貴様はまた、子供のように」
「ふふっ。だって、こんな風にお祭りを見るのは初めてなんですもの。
あっ、始まるみたいですよ」
舞台の方を見ると、数人の男女が現れたところであった。笛や鼓を持つ者もいる。
鼓の音を合図に歌や踊りが始まる。
男女の掛け合いのような、面白可笑しい踊りで、見ているだけでも楽しくなってくる。
「このような踊り、初めて見ました!楽しいっ」
次々に演目が変わりながら一晩中歌や踊りを楽しむ趣向らしく、男も女も入り混じって踊っており、祭りの熱気が徐々に上がってくる。
夢中で舞台の方ばかりを見ていて、ふと隣を見ると、信長様がいない。
「あれ?秀吉さん、信長様は?」
「ん?ああ。御館様は、しばし席を外される。心配ない」
(どうされたのかしら??)
しばらくそのまま、また舞台の演目を楽しんでいたが、なかなか戻ってこない信長様がさすがに心配になり、ソワソワし始めた頃、
一際大きな鼓の音と、幻想的な笛の音が聞こえてくる。
見ると、舞台の上に、天女の衣装を身に纏った背の高い女人の姿があった。