第14章 天女
祭りは夜遅くまで続き、日帰りで城に戻る予定だった私たちも、最後まで踊りを楽しんで、その日は近くの宿に泊まり、翌日に戻ることになった。
いつもは小言を言う秀吉さんも、今日は何だかご機嫌で、天女の姿をした信長様に見惚れていた。
「御館様はやはり何をお召しになっても素晴らしいな!
あんなに美しい女人はこの世にいないよな、なぁ、朱里もそう思うだろ?」
「う、うん…」
(秀吉さん……目が本気だ….)
秀吉さんと別れてから、湯浴みを済ませて部屋に戻る。
「……信長様?」
襖を開けて中に入ると、すでに敷いてあった褥の上で、片腕を枕にして横になって眠る信長様の姿が目に入る。
近くに寄って、すやすやと寝息を立てる穏やかな寝顔を覗き見る。
化粧をすっかり落とした、いつもの信長様のお顔。
(とってもお綺麗だったのに、ちょっと勿体なかったな)
(そういえば、信長様の寝顔って初めて見るかも…
いつも私の方が先に意識を失ってばかりだったから…)
(睫毛が長くて女子のように綺麗な肌)
眠る信長様の唇に、そっと軽い口づけを落とす。
「ふふっ、天女は信長様でしたね。
本物みたいにお綺麗でした…また見せて下さいね」