第81章 雨後
「ふっ…俺が優しいと何か都合が悪いのか?」
「えっ…いえ…そういう訳じゃ……でも、いつもは意地悪なのに」
「貴様…俺を何だと思ってる? あぁ…なるほど、優しいだけでは物足りんか?意地悪されたいと?」
「ええっ…ち、違いますっ!」
「それならそうと早く言えば良いものを……くくっ…」
「やっ…違いますってばっ…んんっ!」
ーじゅうぅ…カリリっ…!
首筋にジュウっと強く吸い付かれ、歯を立てられる。
ぞくりっと痺れるような刺激が、噛まれた首筋から全身へと駆け巡る。
「っ…あ、んっ…痛っ…はぁ…」
「痛くされるのが好きなのだろう?……ここも、か?」
ーきゅっ…くにゅっ…コリコリっ…
「あぁっ…だめぇ…弄っちゃっ…あぁ」
夜着の袷から、するりと差し込まれた手が、あっという間に胸の頂を捕らえ、キュッと強く捻るように愛撫される。
優しいけど意地悪な手つきに、私の身体は呆気なく乱されてしまい、快感に堪えようと力を入れた足先が、シュッシュッと音を立てて敷布を擦る。
「激しくされるのが好きなのか?淫らな身体だな」
「んんっ!いゃ…言わないでぇ…」
恥ずかしい……けれど、否定できない自分がいる。
身重の身体を気遣って優しくしてくれる情事は、心が満たされて嬉しいけれど……本音を言えば、もっと深く信長様を感じたかった。
(お腹に子供がいるのに、もっと深く欲しい、なんて……そんなのダメなのに……)
女としての快楽を求めてしまう、淫らな自分が恥ずかしい。
羞恥に頬を朱に染める私を見て、満足そうに口の端を緩めた信長様だけれど、今朝はそれ以上はなさるつもりはないようで……胸を弄っていた手は、あっさりと夜着の中から出ていってしまう。
「っ…はぁ…うぅ…信長さま?」
「…………そろそろ朝餉が届く頃合いだ。起きて支度を致せ。まぁ、このまま貴様を食してもよかったのだがな…」
「あ…はぁ…はぁ…」
すっかり火照ってしまった身体は、目覚めた時以上に気怠くなってしまっている。
中途半端に燃え上がった熱が、身体の奥でぶすぶすと燻っているようだ。
(もうっ…信長様の意地悪っ)