第14章 天女
道中、馬上にて散々に弄られて、目的の村に着く頃には、はしたなく息を乱してしまっていた。
村の入り口が見えてきて、襟元の乱れた着物を慌てて整える。
(う〜信長様の意地悪っ。秀吉さんにも怒られちゃった…)
「信長様!ようこそお越し下さいました」
「出迎えご苦労。村の者に変わりはないか?」
「信長様、後で俺の田んぼも見てくだされ。信長様が水を引いて下さったお蔭で、今年は稲の育ちも順調なんです!」
「おお、それは楽しみだな、後で見に行こう」
「信長様、これ、儂が作った大根です。食べてくだされ」
「上手そうだな。よく出来ておる。もらおう」
信長様はあっという間に村人達に囲まれて、次々に話しかけられている。
村人達は気さくに話しかけ、信長様も一人一人に丁寧に言葉を返しておられる。
「秀吉さん、信長様は村の人達に凄く慕われてるんだね」
「御館様は身分に隔てなく、誰にでも気さくに話をなさる方だ。百姓だろうと武士だろうと関係ない。
御館様は、どこに行かれても、あの様に民たちの話を直に聞かれるんだ」
秀吉さんが信長様を眩しそうに見つめる姿を見ていると、心の奥が温かくなっていく気がした。