第80章 魔王と虎
顎先を捕らえられ、強引に上を向かされると、本当に塞いでしまいそうな勢いで唇が深く重ねられる。
いつもと違う乱暴な口づけは、信長様の苛立ちを表しているみたいで、胸がきゅうっと締めつけられる。
濃厚な口づけを続けながら、空いた方の手は、夜着の上から身体の線をなぞるように触れていく。
淡い刺激がその先を期待させ、私はふるりと身体を揺らしてしまう。
私のそんな期待を見透かしているかのように、信長様の手が夜着の腰紐に触れる。
「っ…あっ…ダメっ…信長さま…」
ーシュルッ
私の抗う声をあっさり無視した信長様は、勢いよく腰紐を引き抜いて、夜着の前を寛げた。
「あっ…いやっ…やっ、あぁ…」
露わになった肌に、外気がひやりと冷たく感じ、ここが部屋の外であるということを、私に認識させる。
慌てる私にはお構いなしに、信長様の唇は首筋を伝い、その下の鎖骨をカリッと甘噛みする。
骨に柔く歯が触れた瞬間、ピリッとした刺激が背を駆け上がる。
「んあぁっ…やっ…」
(っ…だめ…これ以上、立っていられない…)
与えられる強めの刺激に翻弄されて、くったりと身体の力が抜けてしまった私は、信長様の胸元に凭れるようにして身を預けた。
「……朱里、もっと貴様を感じたい」
「んっ…信長さま…」
私の身体を軽々と抱き上げた信長様は、迷いのない足取りで寝所へと向かい、寝台の上で私を組み敷いた。
キシッと寝台が軋む音が艶かしい。
「朱里…貴様は俺だけのものだ。指一本、髪の毛一房であろうと、他の男が触れていいものではない。貴様に触れていいのは、この俺だけだ」
「っ…あぁ…」
激しい独占欲を示す言葉に、嬉しくて胸が打ち震える。
唇、頬、首筋、胸元…と、順番にチュッチュっと軽く啄むように口づけられていく。
私の身体の全てが、自分のものだと主張するように………
順番に下へと下りていった唇は、お腹の上で何度も何度も押し付けられる。
「っ…くっ、ふっ…や、擽ったいですよ…」
「ダメだ、じっとしておれ」
もじもじと腰を揺らす私を制して、大事そうにお腹に口づける信長様を見ていると、何だかとても可愛くて、愛おしかった。