第80章 魔王と虎
明日はいよいよ信長様のお誕生日
この月の初めから、傘下の大名や家臣、領民たちからの祝いの品が続々と城に届くようになっていた。
明日の祝賀会には、信長様のお誕生日を祝うために、多くの人が大坂城を訪れる予定だ。
秀吉さん主導のもと、祝賀会の準備は着々と進められていて、城内は忙しなくも活気に満ち溢れていた。
城移りして初めて迎える信長様のお誕生日は、例年以上に豪華で賑やかなものになりそうだった。
「…………朱里」
「あっ…んっ、ふっ…あぁ…」
顎先をクイっと掴まれて、あっと思う間に、柔らかな唇が重ねられる。
唇全体をパクリと食むように重ねられた後、口唇を割って、にゅるりと生暖かい舌が挿し込まれる。
「んんっ!っ…はぁ…」
口内に侵入した信長様の舌は、私の舌を絡め取り、くちゅくちゅっと卑猥な水音を立てながら縦横無尽に暴れ回る。
互いの唾液を絡ませて激しく貪り合う口づけに、身体の奥の熱が急速に燃え上がるようだった。
(んっ…こんなに激しい口づけ、久しぶり…気持ちよくて溶けちゃいそう……)
角度を変えて何度も深く激しく重ねられた後、ちゅっと音を立てて信長様の唇が離れていく頃には、私の瞳は熱く潤んでしまっていた。
「ふっ…蕩けた目をしおって…そんなに好かったか?」
「やっ…ん、意地悪っ…」
ニヤリと口の端を吊り上げる意地悪な顔を、恨めしげに見上げると、不意打ちのように額にちゅぷっと唇を押し付けられてしまう。
「!?もぅ、信長様っ?」
「そんな目をする貴様が悪い。これでも俺は我慢しているのだぞ?」
「なっ!?」
(信長様が我慢なんて…似合わない…)
我慢などという似つかわしくない言葉をサラリと言う信長様が可笑しくて、自然と口元が緩んでしまった。
「貴様、随分と余裕だな」
「ええっ…そ、そんなこと…」
飢えた獣のような獰猛な瞳でじっと見つめられ、強く抱き締められると……私は、それ以上抗うことはできなかった。