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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第79章 新命


朱里の体調が一向によくならない。
寝込むようなことはなくなったが、悪阻は相変わらず続いており、連日の酷い吐き気にぐったりと疲れているようだ。

酢の物などのさっぱりとした食べ物は食べられるらしく、政宗が飽きないようにあれやこれやと工夫してくれているので、何とか食事は三食摂れているようだが、華奢な身体が益々細くなっていた。

(悪阻がここまで酷いとは…結華を身籠った時はここまでではなかったように思うが……男の俺には分からぬことが多いな)


物憂げな表情で手の内の鉄扇を弄びながら、はぁ…っと溜め息を溢す信長を、秀吉ら武将達は心配そうに見ていた。

朝餉の後の広間で、そのまま軍議に入ったのだが、報告を聞きながらも、どこか心ここに在らずの様子の信長に、誰一人声を掛けられずにいた。


「あ、あのぅ…御館様?」

「…………何だ?」

意を決して呼びかけた秀吉だが、ギロリと鋭い眼光で不機嫌そうに睨みつけられてしまい、思わず怯んでしまった。

(っ…怖ぇ…今朝の御館様は最高に機嫌が悪そうだ。この様子だと、昨夜も朱里とは別々に御寝なさったか……)

懐妊が正式に分かってからも、悪阻などの体調不良は続いていて、朱里は御館様に気を遣ってか、自室で休むことも多くなっていた。

朱里に思うように触れられない苛立ちが、日々、御館様を蝕んでいるのは目に見えて明らかだった。
それ故に、秀吉は心配で一人おろおろしていたのだが、主の私事にどこまで首を突っ込んでいいものやらと悩み、何となく詳しくは聞けずにいたのだった。

今も意を決して声を掛けたのだが……予想以上の信長の醸し出す圧に、さすがの秀吉も朱里の話題は口に出せそうもなく、慌てて別の話題を話し出す。


「あ、あのっ…今年のお誕生日の祝賀行事ですが、準備は予定通り順調に進んでおります!皆、御館様にお喜び頂けるようにと、趣向を凝らして準備しておりますので、愉しみにお待ち下さい!」

「ああ……誕生日な…」

(誕生日など…朱里が傍におらぬなら何の意味もない。あの辛そうな様子では祝宴にも参加できるかどうか……ああ、この後、少し見舞うか。昨夜はあやつの顔を見られなかったからな…っ…あやつが足りんっ)



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