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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第77章 別離


何気なく庭の木々に視線を向けると、花はもう既にあらかた散ってしまったらしく、緑の葉が目立つようになっている、大きな桜の木が目に入る。

「ねぇ、高政、あの桜の木、覚えてる? 小さい頃よく、あの桜の木の下で、皆でお花見したよね。母上がお弁当作ってくれて、満開の桜を見上げながら、皆で食べて…楽しかったな……」

「……朱里」

「っ……ごめんっ…お城の中は、家族で過ごした想い出がいっぱいあって…楽しかったこととか、いっぱい思い出しちゃうよ…」


信長様と出逢い、結華が産まれて、二人が私の家族になって……小田原に戻ることは、もうない、と思っていたのに……。
この城には、母と過ごした子供時代の懐かしい想い出が溢れていて……今の私には少し辛かった。


「朱里っ…あんまり一人で抱え込むなよ。俺にも頼ってくれ。信長様の代わりには……なれないかも、だけど」

「ん…ありがとう」

高政は、少し寂しげな表情で微笑んだ。



信長様は、まだしばらく戻られないかもしれない。

遠江、駿河、三河の三国の視察が終われば、残るは、甲斐国。

甲斐国は、武田との戦に勝利した後、一時は信長様が治める国となったが、死の淵から舞い戻った信玄と再び刃を交えることになり、結果的に甲斐国は、信長様と信玄が同盟を結び、共同統治をすることになったのだった。

同盟を組んだとはいえ、長らく敵同士だった二人。
いまだ、心から打ち解けあうまでには至っていないそうだ。
特に、一度は自分の国を蹂躙された信玄の、信長様に対する思いは同盟国となった今も複雑だろう。

(甲斐国の視察は長引くかもしれない………『甲斐の虎』武田信玄とは、どのような御方だろうか)


信長様は今、どうしていらっしゃるだろう。
逢いたい。


離れていることがいつも以上に心細く感じるのは、私の心が弱くなっているせいかもしれない……




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