第76章 優しい嘘
(結局、上手く流されちゃったんだよね)
「信長様のご幼少の頃のお話、聞きたかったです」
「ふっ…俺の事など、貴様が一番よく知っているだろうに」
「きゃっ…!」
ぐいっと腰を引き寄せられて、腕の中へ囚われると、額へ、目蓋へ、頬へ、と啄むような軽い口づけが降ってくる。
「んっ…ふっ、ふふっ…擽ったいです、信長さま…」
(信長様、照れてらっしゃるみたい。もしかして誤魔化してる…?)
愛おしい気持ちが溢れて、信長様の耳元に唇を寄せると、とびきり甘く囁いた。
「もちろん、私が一番知っているつもり…ですけど。信長様のことは、もっともっと知りたいんです」
「…………随分と欲張りなことだな」
信長様は嬉しそうに笑って、額をコツンと重ねた。
「ふふ…私、本当はすごく欲張りな女なんです」
「良いだろう。朝まで存分に教えてやる」
(どんな信長様も、どうしようもなく大好き。だから、もっと知りたいし、もっと近づきたいって思う。
私は……貴方にだけ欲張りになるの)
想いが伝わるようにと、心を込めて見つめていると、更に笑みを深くした信長様に、ぎゅっと抱き締められて………それに応えるように、私も腕を伸ばして強く抱きついた。