第13章 安土の夏
若干重い足取りで、朱里の部屋を訪れる。
「朱里、いる?俺だけど、入っていい?」
「あっ、家康?どうぞ〜」
部屋に入ると、朱里は扇子で風を送りながら白湯を飲んでるところだった。額にはうっすら汗が滲んでる。
「アンタ、最近部屋に篭りっぱなしでしょ。
食欲も落ちてる、って政宗さんに聞いたよ。
体調よくないのかと思って様子見に来たんだけど、どうなの?」
「心配してくれてありがとう…….でも、大丈夫だよ」
「………できたの?」.
「は?なんて?何が??」
「……だから……アンタ、懐妊してるの?」
「え?ええええぇ?? なんで? なんでそんなこと聞くの??」
「食欲なくて、体調悪い、信長様の夜伽を断ってる……って聞いたら、誰でもそっちの想像、すると思うけど」
「いやいやいや、それはないし……って、なんで知ってるの??
その、信長様とのこと……」
「…まぁ、色々あって…。
懐妊じゃないんなら、なんで?
何か心配事があるんなら言いなよ。
……相談、乗ってあげてもいいけど」
「う、うん……実は……………」
「……………という訳です。
はぁ〜心配して損した……くだらない」
再び広間に皆が集まり、家康の報告を聞いている。
「家康、よくやった。
早速、御館様に報告する。
しかし……そんな理由だったとはな。女心ってのは複雑だな」
「ひとたらしのお前でも理解に苦しむなら、もう、俺にはさっぱりだな」
「さすがの光秀も、今回は朱里の心は読めなかったかぁ?
まぁ、俺ならこんな回りくどいことしないで、断られても押し倒すけどな」
「女子の考えることは、難しいのですね」
皆が口々に勝手なことを言い合うのを聞きながら、
(御館様は、どうされるんだろう)と1人思案する秀吉であった。