第13章 安土の夏
信長が退出した後、広間では武将たちが膝を突き合わせて思案を始める。
「で、どうするんだよ、秀吉?」
「御館様のご命令は絶対だ!
何としてでも、朱里の本心を聞き出すぞ」
「どーやって?
『何で御館様とヤらないんだ?』って聞くのか?」
「政宗っ、それ、直接的過ぎだろ!
もっと遠回しにだなぁ、『御館様に何か不満でもあるのか?』とかなんとか……」
「……秀吉さん、それ、遠回しに、信長様の手技が悪いって言ってるようなもんですよ」
「なっ、家康、俺にそんなつもりはないぞっ」
「ふっ、忠義第一のお前が御館様の閨事に物申すとは」
「光秀ぇ、お前はまた…ひっかき回すようなことを言うな」
「…あの、朱里様は最近は部屋に篭りっぱなしですし、本当に体調がお悪いのかもしれませんよ。
どうでしょう、家康様が診察を口実に聞き出す、というのは?」
「おおっ、三成、それはいい考えだ!たまにはいいこと言うな。
よしよし、それなら自然に聞けるなっ、うん。
家康、そういう訳だから……頼んだぞっ!」
「はぁ〜、何で俺が?面倒臭い。
三成、余計なこと言うな」
結局、家康が皆に押しきられて、朱里の部屋を訪れることになった。
(全く……俺はどうでもいいんだけど、こんなこと。
まぁ、あの人にあんな顔させるなんて、どういうつもりなのか、興味はあるけど)