第74章 花の宴
「えっ?お花見?」
「そう、ちょうど今、見頃だからってことで明後日、皆で行くことになったから…」
「ええっ…明後日?随分、急だね…」
「今朝決まったんだよ、信長様の鶴の一声でね。あの人は昔から、思い立ったらすぐ、の人だからね…振り回されるこっちの身にもなって欲しいよ、はぁ……
今、秀吉さんが大慌てで手配してる」
朝の軍議が終わってすぐ、自室を訪ねて来てくれた家康と、私はお茶を飲みながら話をしているところだった。
「でも、楽しみだねっ!皆で出かけるのなんて本当に久しぶりだし」
「…まぁ、そうだね。最近忙しかったし、息抜きには丁度いいかな…あんたも結華も、久しぶりに信長様とゆっくり過ごせるんじゃない?」
「家康……」
(家康は優しいな…)
「お花見って、どこまで行くの?」
大坂で初めて迎える花の季節…当然、桜の名所なんて全く検討がつかない。
「城下を出て少し行った先に、丘がある。そこの桜の木がなかなか見事な枝ぶりらしくて、そこで花見の宴をするんだって。
政宗さんが『美味いもん、たくさん用意してやる』って、はりきってたよ」
「わぁ、楽しみっ!じゃぁ、私も手伝うね」
(お花見はお城の中でもできるけど、皆で外に出かけられるなんて嬉しいな。
桜を見ながら外で宴、なんて想像しただけで楽しげだ。
結華もきっと喜ぶだろうし…楽しみだな)
急に決まった花見の宴、準備をする秀吉さんや政宗たちは大変だろう。
それでも、私は今からすごく楽しみで、心が浮き立つのを抑えられなかった。