第74章 花の宴
「……はいっ、できましたよ!」
「ん…あぁ……」
ふぅっと大きく息を吐き出しながら、拭き終わったばかりの髪をクシャっと掻き上げる。
(っ…色っぽいっ…いつものことながら、湯浴みの後の信長様って、色気が半端ないのよね…)
「お疲れでしょう?お身体、お揉みしましょうか?」
夜着の上から肩を撫でながらお聞きすると、
「いや…いい。貴様に身体を揉まれると、朝まで眠れんからな…それとも…誘っているのか?」
「うっ…ち、違いますっ!」
口元に悪戯っぽい笑みを浮かべる信長様を見て、慌てて肩から手を離した。
(色気たっぷりの信長様を見て、胸がざわついたのは事実だけど…っ…最近、し、してないし…)
連日忙しく、今宵のように深夜にお戻りになることも多い信長様とは、もう何日も触れ合っていない。
はしたないとは思いつつも、隣でただ寄り添って眠っているだけでも身体の奥が疼いてしまう夜もあった……信長様には内緒だけど。
(お疲れみたいだし、今日も…なし、かな…)
「…もう休みましょうか…明日もお早いのでしょう?」
寂しい気持ちを隠して、緩く微笑んでみせる。
「………ん、そうだな…」
連れ立って寝所へ行くと、信長様はすぐに寝台に身を横たえられた。
私も隣に寄り添って横になると、額にチュッと軽く口づけてくれる。
「…おやすみ」
「おやすみなさい、信長様」
お傍に寄り添って眠る穏やかな夜も好き。
信長様の腕に包まれて、暖かな体温を間近で感じながら眠る夜は、この上なく幸せ。
でも…触れ合えない夜は、やっぱり少し寂しい。