第73章 恋文
私を抱いたまま城へ戻った信長様は、当然のように天主へと向かう。
そして、当然のように私を寝所へと運び、寝台の上に寝かせると…これまた当然のように覆い被さってこられる。
「……あ、あのっ…信長様?」
(城へ戻ったら色々話を聞く、って言わなかったっけ??)
「……何だ?」
首筋に顔を埋め、耳朶の裏側に舌をチロチロと這わせながら、くぐもった声で返事をされると、耳の奥に直接響くような感じがして、ゾクリと震えが走る。
「あっ…んっ…はぁ…聞かないんですか?私が…あんな場所にいたわけ…とか…んんっ…!」
いきなり耳朶を甘噛みされて、甘い痺れが背を駆け降りていく。
「聞いて欲しいのか?……男に出合茶屋に連れ込まれた挙句、犯されそうになったわけを…」
「っ…うっ…」
怒気を含んだ静か過ぎる口調で言われ、信長様の怒りをビリビリと肌で感じて身体が強張る。
「ご、ごめんなさ、い…つぅ…ああぁ!」
首筋に熱い唇を押しつけられて、ジュウっと強く吸い上げられると痛みとそれを上回るほどの悦楽に襲われる。
「俺以外の男が貴様の肌に触れるなど…全くもって腹立たしい…どこに触れられた?言えっ!」
「うっ……」
「男に言い寄られて困っておったのなら、何故俺に相談せぬ?女の身で一人で何とかしようなどと……何かあってからでは遅いのだぞ?」
「っ…だって…」
信長様を困らせたくなかった。
私はいつも貴方に頼ってばかりで、お城の中でも外でも貴方に大事に守られてばかりだった。
信長様の妻として、毅然とした態度で振る舞わなくてはと思っているのに…現実は上手くいかない。
モヤモヤする気持ちを上手く言葉に言い表せなくて、キュッと唇を噛む。
そんな私の煮え切らない態度に痺れを切らした信長様は、苛立ちをぶつけるように激しく私の唇を奪う。
舌先で強引に口唇を割ると、易々と舌を絡め取られて強く吸い上げられる。
ーちゅうっ…ちゅぷっ くちゅくちゅっ…
「っ…んんっ!やっ…あっ、くっ…」
舌を絡めるたびに、どちらのものとも分からぬ唾液がクチュクチュと絡まり合って口内に溢れてくる。
抑えきれなくなってコクンと飲み干すと喉が鳴る音がして……思ったよりも大きく鳴ってしまい恥ずかしかった。