第73章 恋文
腰に手を回し、ぐいっと引き寄せられたかと思うと、反論は一切許さないというかのように、強く唇を塞がれる。
ピタリと密着した身体は、どちらのものとも分からぬ熱でじわりと熱くなり始めていた。
「うっ…はぁ…んんっ…」
呼吸まで奪うような激しい口づけに、思考がついていかなくなった私は、足元から崩れ落ち、信長様の力強い腕の中に身を委ねた。
くったりと力が抜けたように体重を預ける私に、信長様は仕上げのようにチュッと音を立てて口づける。
「んっ…はぁ…あっ…信長さま…」
「……帰るぞ」
「……はい…あの…ごめんなさい…」
一時も離れたくなくて、信長様の広い背中に腕を回し、縋るように抱きついた。
「っ…仔細は城へ戻ってから聞く。今は…大人しく俺に抱かれていろ」
そのまま私を軽々と抱き上げて、城へと続く道を無言で歩いて行く。
すれ違う人々の視線が恥ずかしくて、私は俯いたままで顔を上げられなかったけれど、信長様の腕の中に包まれていると、すごく安心できた。
怖かった
自分の無知と浅はかさのせいで、取り返しのつかないことになるところだった
図らずも、信長様にも隠し事をしてしまった
それでも…信長様は私を助けにきて下さった
何もかもご存知なのだろうか
考えなしに勝手なことをして、と怒っておられるだろうか
様々なことが頭をよぎり、心が千々に乱れるけれど……今はただ、何も考えず、暖かなこの腕の中にいつまでも身を委ねていたかった。