第72章 淡雪の恋
「……!?っ…これはまた…」
箱の中に納められていたものは、信長の予想を遥かに超えていて…蓋を持ったまま二の句が告げなかった。
箱の中に入っていたのは………
黒々と黒光りする長くて太いもの
先の部分のくびれまで忠実に再現されている
怒張した男性器を模したソレは、いわゆる『張型』と言われるものだった。
南蛮商人からの献上品ということは、異国で作られたものなのだろうか…確かに見たことのないような材質のものに見える。
「黒水牛という牛の角で出来ておるそうで…黒々と、なんとも卑猥な色合いですな」
ニヤリと口の端を緩めながら言う光秀は、表情も変わらず相変わらず飄々としている。
商人から箱の中身については聞いていたのだろう…しかし、また、何故このようなものが献上品に……
宮中の女官や奥仕えの女たちなど、男とまぐわう機会の少ない女どもが、張型を使って己の性欲を慰めている、などと噂には聞いたことがあるが………さすがの信長も、張型を実際に手にするのは初めてだった。
(異国にも似たようなものがあるとはな……)
「御館様の御立派なモノには到底及ばぬでしょうが…奥方様との閨にこのようなものを使って愉しまれるのもまた、一興かと…」
「ふっ…戯れ事を…」
光秀に向かってニヤリと唇の端を歪めてみせると、箱の中へと手を伸ばす。
真紅の艶々とした布に包まれるようにして納まっている、黒い張型をそっと取り出してみる。
ひやりと冷たく固い石のような感触は、人肌とは違う無機質さを感じさせ、微かな重みがあった。
質感や手触りは自身のモノとは全く異なるが、形は見事に男根そのものだ。
「っ………」
黒々とした固い張型をずっぽりと咥え込む、朱里の赤く熟れた花弁を想像し、思わず、ゴクリと喉を鳴らす。
朱里が俺以外の男に抱かれるのは論外だが…作り物の男根を咥え込んで乱れ啼く姿には興味が唆られる。