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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第71章 商人の町


堺の町は周囲を堀で囲まれた環濠都市であり、明や南蛮との貿易の拠点であった。
港には外国船が多数寄港しており、今や、日ノ本一の賑わいを見せている。
織田家に属する九鬼水軍の西方向け拠点にもなっているため、鉄甲船などの軍船もこの地に数多く駐留していた。

信長様は足利将軍を奉じて上洛するとすぐ、堺の地を直轄地とされたため、鉄砲や火薬の原料となる硝石などが南蛮との貿易によって優先的に手に入るようになった。

それにより織田家は戦をより有利に進められるようになり、堺の地は、信長様の天下布武を軍事的にも経済的にも支える、重要な拠点となったのだった。

織田家は堺に代官を置いているが、この地では古くから、会合衆と呼ばれる36人の有力な商人達からなる自治制が敷かれており、信長様は堺を実質的に支配下に治めつつも、これまでどおりの合議制による自治統治を認めている。

会合衆の中でも、より有力な力を持って堺を治めているのが10人の納屋衆と呼ばれる商人達であった。

今井宗久は、納屋衆筆頭とも名高い、堺を代表する商人であり、同じく納屋衆である津田宗及、千宗易とともに茶人として名を馳せる文化人でもある。


(信長様に茶の湯の指南をなされたと聞いているけれど…堺の顔とも言うべき御方…どんなお人だろう?)




昼前に堺の町に着いた私達は、宿となる商館へと向かった。

西洋風の外観に、異国の香りが漂う内装が施された部屋。

以前に訪れた時は、戦の後だったこともあり、ゆっくりと寛ぐような心の余裕もなかったが、改めて見てみると、まるで異国へ来たかのような気分になる建物だった。


「朱里、商談は明日、この商館で行われる。今日はこの後は特に予定もないゆえ、港へでも行ってみるか?」

「わぁ〜、いいんですか? 海、見たいですっ!」

「ふっ…貴様は本当に海が好きなのだな」


安土も大坂も豪華絢爛な城で、そんなお城で日々暮らせることは幸せなことではあるのだけれど、これで海が近くにあれば最高なのに、と小田原育ちの私はつい思ってしまうのだった。



青い空に白い砂浜
どこまでも広がる穏やかな大海原に、時折白い波が立つ美しい光景は、故郷を離れて何年も経った今でも、決して忘れることはなかった。



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