第69章 接待〜甘く解して
朱里は『肩を揉む』と言って、寝台の上に上がり、俺の背後に回ると、その華奢な手で肩から腕にかけてを揉み始めたが、女の細腕ではなかなか思うようにはいかないようだった。
『貴様も疲れているのだから、もうよい』
そう言ってやろうとしたその時、朱里は体重をかけて揉み始めたのだ。
(っ……おい、それは…)
思わず俺はドキリとする……体重をかけたことで、朱里の胸が当たって…柔らかな膨らみが、俺の背中にむぎゅっと押しつけられていた。
(くっ…こやつ、気づいてないのか…)
無意識に、ぐりぐりと押しつけられる膨らみに、我知らず意識が集中してしまう。
「っ…信長様、どうですか?」
「うっ、ああ…」
(どう、と言われても……)
朱里は健気なほど必死になって揉んでくれているようだが、こっちは最早それどころではない。
そんな俺の心の内の葛藤に微塵も気付かない朱里は、
「信長様、肩以外も凝っていらっしゃるんじゃないですか?うつ伏せになって下さいませ、腰とか背中とかも解しますから」
「あ、あぁ…」
急に指圧に目覚めたのだろうか…やけに張り切った様子の朱里に気圧されて、言われるがまま、寝台の上にうつ伏せに寝転がった。
朱里の手が、背中から腰にかけてをゆっくりと撫でていく。
するすると撫でた後、今度は体重をかけながら、肩甲骨の横あたり、背中、腰と上から順番に、親指の腹でゆっくりと押していく。
時折、ぐりぐりと手のひら全体を使って押し揉みながら、固く凝ったところを念入りに解していかれると、思っていた以上に気持ちがいい。
凝り固まった身体から徐々に力が抜けていき、柔らかくなっていくのが分かる。
「っ…うっ…はぁ…」
図らずも、口から吐息が漏れてしまった。
「………気持ちいいですか?」
「……んっ…あぁ…」
腰をぐいぐいと押していた手は、更に下へと滑っていき、足の付け根の部分から太腿、ふくらはぎへと進んでいく。
ここでも、親指で押したり、手のひら全体で揉んだり、摩ったり、と朱里の手は、俺に大胆に触れてくる。
凝った身体を揉み解される物理的な気持ちよさと、愛しい女の手が己の身体に触れているという精神的な充足感とで、俺はこの上ない幸福な心地になっていた。