第69章 接待〜甘く解して
信長様のお茶接待は、正月二日目、三日目の大名達との謁見後にも催され、それもまた大好評だった。
普段は畏怖と尊敬の対象である信長様が、茶室という狭い空間で自ら茶を振る舞ってくださるということが、予想以上に家臣や大名達の心を惹きつけたらしく、皆、非常に満足そうだった。
私も、信長様が点てたお茶を頂けて大満足だった。
(秀吉さん達も嬉しそうだったな。家康も…珍しく口数が多かったし…ふふっ…)
例年になく盛況だった新年の謁見行事もようやく終わり、静かな夜が訪れていた。
「信長様、三日間お疲れさまでした。正月というのに、あまりお休みにもなれませんでしたね。あの、お疲れではございませんか?」
正月三が日、信長様は複数回に渡る謁見とその後に続く茶席を全てこなされて、殆どお休みがなかったのだった。
(私は、全部出なくてもいい、って言われて休憩もさせてもらったけど…信長様は全然休んでいらっしゃらなかったし…きっとお疲れだわ)
「ああ…流石に少々疲れたな」
信長様は、寝台に腰掛けて、首と右肩をグルグルと回しながら大きく伸びをする。
「あっ、肩、凝ってらっしゃいます?私、お揉みします!」
(あれだけ沢山の人にお茶を点てられたんだもの、流石に信長様でも手、疲れちゃうよね…)
さっと信長様の背後に回ると、夜着の上からゆっくりと肩をお揉みする。
夜着の上からでもはっきり分かる筋肉質な身体に、ドキッと胸が高鳴るけれど……
(んっ…ダメダメ…信長様はお疲れなんだから…凝りを解して差し上げないとっ…って固っ!っ…これは結構、力がいる、かも…?)
ぎゅっぎゅっと力を入れて、肩から腕にかけて揉み解す。
「っ…結構、凝ってますね…」
自分で言うのもなんだけど、そんなに力がある方ではない。
最近は、武術の鍛錬も時々しか出来ていないから、体力も落ちているはずだ。
手だけでは、信長様の凝り固まった筋肉は解せそうもない……そう思った私は、体重を乗せて揉むことにした。