第12章 酒の効用
信長様の腕に抱かれて、天主に上がる。
「朱里、水だ。飲むがよい」
私を褥に下ろしてから、お水の入った湯呑を渡してくださる。
「うふふ、ありがとうございます……いただきます。」
御礼を言って湯呑を受け取ろうとして、焦点が定まらず手元が狂って湯呑を取り落としてしまった。
状況を理解できずにぼんやりとした頭で、手から湯呑が落ちていくのを見送る。
湯呑はそのまま膝の上に落ちて、パシャリと水が着物を濡らした。
「っ、あっ」
「ふっ、濡れてしまったか。仕方のない。俺が着替えさせてやる」
濡れた着物を脱がせようと着物の袷を開く際に、信長様の手が少し肌に触れる。
それだけで鼓動が早まり、身体の奥の方が熱を持ったのを感じた。