第12章 酒の効用
久しぶりの外出による開放感と、美味しい夕餉によって、その日はいつもよりもお酒がすすんでいた。
「この酒は少し甘いから、飲みやすいぞ」
「ありがとう、光秀さん。
ん〜、本当だ!甘くて美味しい!」
すぐ近くに座っている光秀さんが、私の杯が空くたびにすかさずお酒を注いでくれる。
光秀さんが勧めてくれるお酒は、甘くて口当たりがよく飲みやすくて、知らず知らずのうちにかなりの量の杯を開けてしまっていたようだ。
「おい、朱里。なんか頭がふらふらしてるぞ?大丈夫か?
光秀、お前、どれだけ飲ませたんだ??」
「なに、大した量は飲ませていないぞ」
信長様の右隣に座っている秀吉さんが、私を心配して声を掛けてくれるけれど、その声すらぼんやりと遠くに聞こえていた。
(あれっ?頭がふわふわするなぁ…気持ちいい…)
「……、朱里。貴様、大丈夫か?」
「ん〜、だいじょうぶですぅ、のぶながさまぁ…
まだ飲めますぅ〜」
「………仕方がない奴め。これ以上はだめだ。もう、終いにするぞ」
信長様は徐に立ち上がって私を横抱きにする。
急に抱き上げられて、信長様の顔が間近になったことが嬉しくて首に腕を回してギュッと抱きつく。
「うふふっ、のぶながさま、だいすきですっ!」
「っ、だいぶ酔っておるな……
朱里は天主に連れて行く。皆はそのまま続けよ」
朱里を抱いて足早に広間を出る信長を見送りながら、武将たちは口々に呟く。
「あんなに甘い信長様、初めて見たな」
「ふっ、小娘が酒で乱れるとは…この後が楽しみだな」
「……光秀、お前、わざとやったな?」
「朱里様、大丈夫でしょうか?天主にお水でも持って行きましょうか?」
「三成は黙って座ってて。たぶん邪魔だから」