第68章 おあずけ
身体を小さく丸めて眠りについた朱里の気配を背中に感じて、信長は、軽く身動ぎする。
「くっ…はぁ…」
身体が熱い
下半身がジクジクと疼いて堪らない
(あの酒…何か入っていたな…生き血ぐらいで、ここまでになるはずがない。
俺に散々おあずけを食らわせておいて、今宵はこのような趣向を仕掛けてくるとは…全く、こやつの考えておることは訳が分からん…)
隣に眠る朱里の頬に、指先でそっと触れる。
ひとたび触れれば、もっと、もっと、と欲しくなり、身体の芯が疼き出す。
湯浴みから上がる頃には、酒が回ったのか、次第に身体が火照り始め、欲は暴発寸前にまで膨れ上がっていた。
ここ数日、思うように朱里を抱けていなかったこともあって、我慢もそろそろ限界だった。
艶めかしい夜着姿の朱里を見て、気が昂ってしまい、平静を装いつつも、内心では動揺を抑えるのに必死だったのだ。
それほどに、あの薄手の夜着はまずかった…今すぐ抱きたい、と思うほどに。
だがその反面……朱里の思惑どおりに己が動かされているような、男としてどうにも情けない思いがして、このまま流されてしまうのが妙に癪に触ったのだ。
気がつけば、朱里に背を向けていた。
男の痩せ我慢で無理矢理に抑え込んだ欲は、簡単に消えてくれるわけもなく、今もなおジクジクと疼いては身体を蝕んでいる。
(これは…今宵は眠れそうもないな)
一度抜いてしまえばいいのだろうが、朱里を拒否した手前、自分で、というのも気が引ける。
(全く…こんなにも俺を振り回すとは…やってくれるわ…)