第67章 秘密の宴
「貴様以外の女には触れさせぬ、と約束しておきながら何を今更、と思うか?
男の身勝手だと思われても致し方ないが…。
貴様以外の女がどれだけ触れようとも、嬉しくも何ともない。
俺の心を動かせるのは、貴様だけだ、朱里」
いつの間にか天主に着いていた。
私を抱きながら器用に襖を開けて室内に入った信長様は、真っ直ぐに寝所へと足を向ける。
寝台の上へ優しく降ろしてくれた後、じっと見つめられる。
何か言わねば、と思うが上手く言葉が見つからない。
「朱里…愛してる」
(ずるい……そんな風に言われたら…そんな切なそうな顔を見せられたら……何も言えない)
「朱里…俺が心の底から触れて欲しい女は、貴様だけだ。
何度でも言う…愛してる」
「っ……なんで?ずるいです…そんな風に言われたら、何でも許してしまいそうになります」
「仕方あるまい…俺は事実しか言わん」
ニヤッと悪戯っぽく笑う信長様を見ていると、『あぁ、やっぱりこの人には敵わないな』という思いが強くなり、愛おしさが募る。
「……どんなに綺麗な人に触れられても、嬉しくないですか?」
「貴様以外の女を美しいと思ったことなどない」
「っ…妖艶な手管で迫られても?」
「俺は女の方から迫られるのは、さほど好きではない…貴様は別として」
「っ……」
「貴様から責められるのは大歓迎だが?」
「やっ…もぅ……」
「だが…今日は貴様を責めるのは俺の方だ」
「………………は?」
何だか不穏な言葉を聞いた気がするけど…気のせいかな。
ギシッと寝台が軋む音とともに、肩を押された私は、次の瞬間、体勢を崩して寝台に倒れ込んでいた。
「えっ?あっ、やっ…信長さま!?」
間髪入れずに馬乗りになられて、がっちりと身体を押さえ込まれてしまう。
「貴様には色々と聞きたいことがあるのだ。
覚悟しておけ、と言うたであろう?」